500年以上、受け継がれてきた情熱と誇り
日本で最も古い植林の歴史をもつ、吉野地方。そこでは吉野杉・吉野桧といった優良木材を育ててきたことが知られています。
吉野杉は、固有の芳香を有し,通直,完満,無節の優良な大径材として知られています。
径級に応じて,間伐材の細いものは海布丸太,おもに和風建築の化粧用材に,やや太いものは磨き丸太として床柱用に仕上げられます。また、大径材は柾目,天井などに木取りされます。そのほかに高級造作材,割柱,建具,樽,桶木などに利用されています。
この歴史ある吉野林業はどのようにしてはじまり、今日まで続いてきたのでしようか。
足利末期の1500年頃、奈良県の吉野地方で初めて人の手によって木が植えられたという記録があります。豊臣秀吉が当地を領有し、大阪城や伏見城をはじめ畿内の城郭や寺社仏閣に、吉野の木が使われるようになりました。その後、徳川幕府の直領となってからも林業は住民の生業として、吉野の地に深く根付いていきました。最大の木材消費地である大阪に近く、吉野川の水運によって輸送が発達したことが、木材の商品化を進展させました。また、間伐材を収穫・販売する仕組みを生み出し、これが高度な育成林業の出発点となったのです。
また、15世紀初頭に大和(やまと)の三輪(みわ)山・春日(かすが)山の杉の苗木を植えたとされ,江戸時代中期には屋久(やく)島の杉種を移入して改良を図ったと言われており、早くから品種改良を行われてきました。
吉野の木は「節が少なく、年輪が細かく、まっすぐな材」なので、水が漏れにくく酒樽をつくるための材料(樽丸)に最適でした。この頃から、すでに商品価値の高い優良木材を生産しており、吉野林業は「樽丸林業」ともいわれてきたのです。また、江戸時代、品質が優れた上方の酒はスギの酒樽に詰められ、船によって江戸へと運ばれていました。その間に酒にスギの香りがつくことによって、独特の香りと味になり、江戸の人々に喜ばれました。
1840年。吉野郡川上村の山林地主の家に、のちに「造林王」と呼ばれる土倉庄郎が生まれました。土倉は15歳で家業を継ぎ、林業の発展に力を入れました。たとえば苗木を密集して植えることと丁寧な育成により、優れた木材を生産できるように工夫した「土倉式造林法」という独自の育成方法を体系化し、全国に普及。その技術は各地で成果をあげました。また、木を運び出すために道路や川を整備するなど、日本の林業の発展に多大な貢献をしました。それ以外にも、小学校の開設、同志社大学・日本女子大学などの創立援助や自由民権運動など幅広く活躍しています。1917年に亡くなった後には、その多大な功績を記念して川上村大滝の岩に「土倉翁造林頌徳記念」の文字が刻まれた碑が建立されました。いまでも彼の魂が、吉野の山々をやさしく見守っているようです。
吉野の山では、いまも土倉庄三郎が生み出した「土倉式造林法」と、「山守制度」によって林業が営まれています。「山守制度」とは、山を所有する者(山主)と山を管理する者(山守)を分ける管理制度のこと。つまり、この制度では山主に代わり山守が現場で木を育てる役割を果たすのです。一般的な林業では山主が日々手をかけても木が育つまでお金が入りませんが、この山守制度では、山守が山主から世話代をもらい地元の人を雇用して山の手入れを行います。また、木を伐採するときには報酬をもらえるなどのメリットがあり、山守は一生懸命に木を育てます。こういった山主と山守の信頼関係が何世代も引き継がれることによって、山が丁寧につくりあげられ、吉野の木の高い付加価値を生み出しているのです。現代では山主と山守の関係も変わりつつありますが、これからも吉野の山づくりと上質で美しい木材は、継承されていきます。
HP:「奈良の木のこと」より
吉野杉は、色合いから紅杉と称せられ、紅淡色で年輪が緻密に揃い強度もあります。現在、木造文化財として残っている寺社仏閣の多くは吉野杉で建てられています。
2008(平成20)年2月には、特許庁の地域団体商標に登録されました。(商標登録番号は第5110352号。地域団体商標の権利者は、奈良県木材協同組合連合会・奈良県森林組合連合会)
杉の品種は,生育地のさまざまな集団の中から,永い年代にわたる林業家の努力によって,あるいは実生で,あるいは挿木や伏条性利用の無性繁殖によって,選び出されてできたものが多く、実生系では,米代川流域の秋田杉,富山県立山の立山杉,吉野林業の吉杉,高知県の魚梁瀬杉,屋久杉などが有名です。特に、吉野杉は,鮮紅色で木理の通った材が柱や樽丸に適して有名となり,現在では、柱材だけでなく、鮮紅色が綺麗な床材としても人気があります。
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写真は、材木市を行っていた昭和63年当時の写真です→
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